(JSBM)日本超音波骨軟組織学会 西日本支部
2009/11/19 更新
平成21年11月8日(日) 街には桜島の火山灰が静かに舞う中、かごしま県民交流センター東棟4階大研修室4において、第30回西日本支部九州分科会が総勢43名の参加者を迎えて開催されました。

【開会の辞】
 総合司会の有馬 由丈先生より、開催にあたっての注意事項などがアナウンスされました。続いて田中 和夫学会監事より、遠来の講師の先生方と参加された方々への感謝の言葉と共に、「超音波に関する貴重な学習ができることを期待します」というご挨拶がありました。
総合司会:有馬 由丈先生

総合司会:
有馬 由丈先生

田中 和夫学会監事

田中 和夫学会監事

【教育セミナーの部】
 学会副会長である佐藤 和伸先生を講師に「日常遭遇する上肢の疾患(超音波でのアプローチ)」という副題を掲げて、教育セミナー初級編「上肢」の部がスタートしました。
 セミナーの冒頭で、柔道整復師の超音波診断装置の使用に関して厚生労働省が肯定したのは、あくまでも柔整の業務内での超音波の使用であり、診療の補助としての超音波検査=医業の超音波検査とは範囲が違うことを認識していなくてはいけないと述べられました。
セミナーでは、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋腱、上腕二頭筋長頭腱に関して、超音波でのアプローチ方法と画像描出を、肩の解剖画像や動画を含む超音波症例画像、さらには人体模型画像なども用いて丁寧に解説されました。
 肘関節についても、構造を超音波画像と人体模型画像で説明され、野球肘(離断性骨軟骨炎)、腕橈骨筋断裂、手根管などの症例画像を始めとした各種の豊富な画像を用いて解説していただきました。
 モデルを使っての実演も行われ、左のスクリーンには超音波画像が、右のスクリーンにはプローブワークのリアルタイム画像が映し出され、大変わかりやすい講義となりました。
 その後は会場内に設置された5台の超音波診断装置を使用しての実技演習となり、講師と各インストラクターの指導のもとに、参加者全員がチェックシートに指定された演習項目「肩関節:棘上筋腱」「肘関節:腕橈関節」「前腕骨:橈骨リスター結節」の正確な描出に取り組みました。
佐藤 和伸先生

佐藤 和伸先生

【教育セミナー 入門編第2章「上肢(健常例)」】
 講師に寺原 雅典先生が就かれ、学会編の『入門 運動器の超音波観察法』に基づき、入門編第2章「上肢(健常例)」のプレゼンがスタートしました。
 始めに超音波診断装置を扱う上での約束事等を説明していただき、続いて肩関節、肘関節、手指、手根管の構造や超音波診断装置での描出方法を解説していただきました。
 まとめとして、「解剖の知識が大切」「最初は骨から観る」「慣れたら筋・腱・軟部損傷を観る」「健側側・患側側を比較することが大切」「画像診断より視診・触診・徒手検査を先に行うこと」をあげられました。
寺原 雅典先生

寺原 雅典先生

【基調講演の部】
 昼食休憩を挟んだ午後からは、首都大学東京 健康福祉学部放射線学科の新津 守教授をお迎えし、「超音波の関節への応用 -最新MRI画像との比較を含めて-」というテーマでご講演いただきました。冒頭、現在教鞭をとられている首都大学東京のご紹介がありました。
 続いて、大腿四頭筋腱、膝蓋大腿関節、外側側副靱帯、内側側副靱帯などを最新の3テスラMRI画像と超音波画像を併用して解説していただきました。放射線科医として、最新の診断装置を駆使されている新津先生ならではの講演となりました。
 また「MRIと超音波はどのくらい分解能があるのか?」という、アクリル板を使用しての興味深い実験結果も示していただきました。さらに超音波診断装置の新機能RVS(Real-time Virtual Sonography)※の解説もありました。

※RVSとは、超音波診断装置に保存された位置情報を持ったMRI画像またはCT画像を元に、磁気センサーを取り付けたプローブと磁気位置検出ユニットを使うことによって、プローブがどの位置で、どの方向を診断しているのか検知してリアルタイムで演算し表示するシステムです。
新津 守先生

新津 守先生

基調講演の様子
基調講演の様子
【シンポジウムの部】
 分科会は続いてフィナーレを飾る「シンポジウムの部」へと移りました。
 座長に大原 康宏先生が就き、シンポジストには東京から、川上 泰雄先生(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)、長尾 秋彦先生(クロス病院 整形外科部長)、佐藤 和伸先生(佐藤代田整骨院院長)の3名をお迎えしました。
 シンポジウムで検討いただく個別のテーマとして、九州の会員である小幡 龍生先生より「 鎖骨骨折の仮骨形成、 肩腱板損傷」、草原 英文先生より「超音波から観た尺骨下1/3骨折」、平川 敬史先生より「臨床症例画像」という症例報告がありました。
 シンポジストからのご意見に加え、会場からの活発なご意見もあり、症例報告者を始め参加者全員に有意義な質疑応答となりました
 さらにシンポジストである佐藤 和伸先生から、2年以上にわたって超音波で経過観察されてきたママさんバレーの選手の肩関節障害(インピンジメント障害)の事例が、医師によるMRI画像も交えて紹介され、シンポジスト間を中心に、さらに専門的な意見交換がされました。

 続いて、クロス病院整形外科部長 長尾 秋彦先生からも、【上肢体外傷とスポーツ障害】というテーマでプレゼンをいただきました。
 橈骨遠位端骨折を「Colles骨折」「Smith骨折」「Barton骨折」という骨折型に分類し、手術時の画像やレントゲン画像も交えながら、固定方法などを解説していただきました。 
 特に創外固定のご紹介には会場の参加者からの質問が相次ぎ、長尾先生からも接骨院での固定方法とその効果を尋ねられるなど、丁寧に質疑応答をしていただきました。
座長:大原 康宏先生

座長:大原 康宏先生

小幡 龍生先生(熊本県)

小幡 龍生先生(熊本県)

草原 英文先生(熊本県)

草原 英文先生(熊本県)

平川 敬史先生(長崎県)

平川 敬史先生(長崎県)


講師:坂本 哲也先生(埼玉県)

シンポジスト:
川上 泰雄先生
早稲田大学
スポーツ科学学術院教授

講師:坂本 哲也先生(埼玉県)

シンポジスト:
長尾 秋彦先生
クロス病院
整形外科部長

講師:坂本 哲也先生(埼玉県)

シンポジスト:
佐藤 和伸先生
佐藤代田整骨院院長

シンポジウムにおける意見交換の様子
シンポジウムにおける意見交換の様子
【閉会の辞】
 寺原 雅典学会理事より参加者への感謝と、遠来の講師・シンポジストに対する感謝が述べられ、来年度の教育セミナー中級編の九州開催を目指して、超音波についてさらなる積極的な学習への取組みが呼びかけられ、盛大な拍手に包まれながら、日本超音波骨軟組織学会 第30回西日本支部九州分科会は終了しました。
総合司会:有馬 由丈先生

総合司会:
有馬 由丈先生